プロパンガスの設置の際に『無償貸与(むしょうたいよ)』という契約を聞いたことがあるかもしれません。
無償貸与は初期費用がかからず、ガス機器を設置できるメリットがある反面、仕組みを理解しないと損をしてしまいます。
今回は無償貸与の特徴やデメリット、今後の動向について解説しますので参考にしてください。
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ガス給湯器の無償貸与とは
ガス給湯器の無償貸与とは、配管工事やガス機器の購入・取り付け費用をガス会社が引き受ける代わりに『最低契約期間』を設定する仕組みです。
名称から『工事費用・購入費用が無料になる』と誤解されがちですが、リース契約に近いイメージです。
契約中は工事費用・購入費用を分割し、ガス料金に上乗せした費用を契約者が支払います。
通常、1万円の無償貸与ごとに従量単価が約10円値上がりします。
一般的に契約年数は10~15年に設定されるため、解約には工事費用・購入費用の残金を違約金として支払わなければいけません。
違約金の費用がどのくらいかかるのか計算します。
13万円の配管工事における無償貸与契約を結び、最低契約期間を13年と設定している場合です。
5年目で解約する場合には、以下の違約金が請求されます。
130,000円÷13年=10,000円
10,000円×(13年ー5年)=80,000円
8万円の違約金を支払わなければいけません。
※違約金の計算方法は契約内容により異なります。
給湯器を無料設置するプロパンガス屋の狙い
プロパンガス業界は、競合同士で価格競争が存在せず、新規顧客の獲得が難しい業界です。
ガス会社は無償貸与による初期費用を抑えた提案ができるため、採用してもらいやすくなります。
契約者や賃貸オーナーはコスト削減で新しいガス会社を検討しても、違約金の関係で切り替えづらく現在のガス会社を利用するしかありません。
無償貸与のデメリット(注意点)
プロパンガスの設置には配管工事や給湯器の設備購入が必要になり、初期費用が大きな負担になります。
新居の引越しの際にはガスの契約の他に様々な費用がかかりますが、無償貸与を利用することで初期費用が削減できるため、その分の費用を別の目的に使用できます。
デメリットは前述のように『最低契約期間』が設定されるため、期間中の解約には違約金が発生します。
その他に以下のデメリットも発生します。
- ガス会社を切り替えづらい
- 不当な値上げをされる
- 最低契約期間後もガス料金が変わらない
ガス会社には、ガスに関係がない設備まで無償貸与に含み提案する会社も存在します。
賃貸物件ではその費用も入居者のガス料金に反映されてしまい、無償貸与契約を結んでいない場合よりもガス料金が高くなるため、入居者の不満につながります。
結果として退去者の増加や新規入居者が減少します。
プロパンガス屋の無償貸与は給湯器だけではない
給湯器以外ではエアコン・ビルトインコンロ・インターホン・洗面台・温水洗浄便座・シーリングライト・防犯カメラなどの住宅製品や配管工事、ガス機器設置工事などの工事サービスが対象です。
新築購入や新しく部屋を借りる際には一度に出費がかさむため、貸与してもらうことでメリットはありますが、最初は給湯器のみだったものが、だんだんとエスカレートして数が増えていく場合もありますので注意してください。
今後は給湯器の無償貸与は禁止の方向
- 基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)徹底
- 電気エアコンやWi-Fi等、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への上禁止
- 賃貸集合住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用について計上禁止
改正省令の公布から1年後(2025年春頃)施行予定
LPガスの商慣行是正に向けた対応方針中間とりまとめ | 経済産業省
プロパンガス設置では様々な設備や工事で『無償貸与』に組み込まれ、ガス料金に上乗せされ請求されるトラブルが多発しているため、経済産業省は、無償貸与の禁止を予定より2年早めて、2025年度から実施する方針を固めました。
2017年にプロパンガス料金の透明化に向けた策定・改正がありましたが、今回は違反の罰則規定も設定され、不透明な料金請求の是正への効果が期待できます。
ガス料金を『基本料金・従量料金・設備料金』の内訳が記載された三部料金制になる予定です。
すでに一部のガス会社では、三部料金制での明細発行に切り替えた会社もあります。
入居者はガス料金と設備料金の明細が確認できれば、賃貸契約前にガス料金を理解した上で入居・契約が進められます。
賃貸の集合住宅では設備料金の請求が認められない方針のため、利用中のガス会社・地域に関係なくガス代が安くなります。
ガス会社側は2025年度から違反の場合には立ち入り検査を行い、罰金が科されます。
既存の契約は、事業者の収益の影響も踏まえて禁止とせず、料金の内訳を表示して透明性を確保するように求めています。
経済産業省は、来年の春までに関係する省令を改正し、不透明な商慣行の是正を図る予定です。
ガス給湯器の無償貸与は計画的に行いましょう
給湯器の取り付け・交換費用は約10万円~15万円かかります。支払いが苦しいと感じたら、無償貸与で契約してもよいかもしれません。
デメリットやトラブルが多いですが、消費者が損を防ぐための知識を持っていれば、無償貸与は有効な契約です。
無償貸与で損をしないために確認するポイントは以下の4つです。
- 信用できるガス会社か
- 契約書内容に疑問点はないか
- 適切な支払い金額か
- メンテナンスは付いているか
高額な支払いで後悔しないために、情報収集や疑問点を解決してから契約しましょう。